「対決!データ独占防止当局VSプラットフォーマー」の向かう先は明るい社会の窓の構築であって欲しい
こんにちは!DACです。
今回は、お代は情報、お金は「とりあえず」要らないよ…な「プラットフォーマー」絡みのお話です。
「プラットフォーマー」はお金よりまずは情報を重んじる
プラットフォーマーとは
「プラットフォーマー」とはGoogleやFacebook、Amazon、Apple、阿里巴巴集団など様々。「複数のグループのニーズを仲介することによってグループ間の相互作用を喚起し、その市場経済圏を作る産業基盤型のビジネスモデル」を
手ずから行う企業または企業群のことを指します。
diamond.jp
- ツーサイド・プラットフォーマー:単純に2つのグループをつなぐ閉鎖的なプラットフォームを擁する企業、企業群。例えばAirbnb
- マルチサイド・プラットフォーマー:多数のグループをつなぐ拡張性を持った複合的プラットフォームを擁する企業、企業群。例えば、楽天
- カテゴリー・プラットフォーマー:特定の業種や技術分野でデジタルエコシステムを形成するプラットフォームを擁する企業、企業群。例えば、米GE社はIoTと産業用途に特化したクラウドサービス「Predix Cloud」やUber、クックパッド
種類は色々あれど、通底するものとしてITRが定義するデジタルビジネス「デジタルデータによって、人、モノ、コトをつなぐことで新たな価値を提供する事業形態」
がある。
まずは情報ありき、仕組みありき
定義自体にあるようにプラットフォームにはまずは「デジタルデータ」即ち情報ありきです。
Googleを例に挙げれば、検索、Gmail、GoogleDrive、カレンダー、フォト、Youtube、Map、ニュース、GooglePlay、アカウントサービス、よく使われそうなものを挙げるだけで大量にあるだろう。これらは法人向け・個人向けに有償サービスもあるが、基本は無料サービスとして提供されています。
昔はWebの無料サービスと言えば、広告が大量に貼り込んであったり機能制限が多かったものですが、これらのサービスは無料で使っても然程ストレス無く利用できます。と言いますか余程使い込んで、より便利により制約なくとヘビーな使い方をしない限り大抵の場合無料版で十分以上の利便を提供してくれます。
無料でわざわざ利便を提供する裏には、ユーザには対価としての情報提供が求められます。直接的なものとしては「個人情報」があるでしょう。ただ、それだけではなく各種サービスの設定や利用状況はまさしくユーザの行動指針、情報運用、情報の流動傾向を示すものです。
検索であれば、Webで認証など制約がなくオープンに公開されたWebリソースであればクローラで要素を抜き出し、情報を求める閲覧者への紐づけを提供します。その結果何が求められ、何が価値づけられるかといった様々な分析、その集積を元手なく手に入れられます。勿論、仕組みの構築、維持管理、分析指標の設定といった部分はその企業の持ち出しで投資は少なからず必要です。しかし、そもそものデータ自体のサービスに寄りつく大量の他力あってのものでそれ自体の元手は基本的にゼロで膨大に入手できるうえに時々刻々と更新されていきます。
こういった流れの核であるデータが「インターネット上の新たな通貨」と呼ばれる所以です。ネットユーザにとって見れば何を今更感はありますがね。
データ独占は問題視される状況となってきている
しかし、この状況を単に便利で快適な公共サービス…と享受しているだけでは済まず、問題視する観点も生まれています。
www.nikkei.com
誰がどういうふうに問題視しているの?
市場の独占排除などを担う日欧などの競争政策当局
です。日本で言えば、公正取引委員会です。
こんなビッグデータ時代の到来で、市場の独占排除などを担う日欧などの競争政策当局が苦悩している。談合などと違って白黒を付けにくい「データの独占」という新たな課題が出てきたためだ。独占禁止法の新しい運用など試行錯誤を続けている。
公正取引委員会は6月6日、市場で支配的な地位に就いた企業が不当にデータを集めたり、データの囲い込みをしたりした場合には独占禁止法を適用する考えを初めて明確にした。
個人情報や機械、車の稼働データまであらゆるデータの分析が技術革新に欠かせなくなった現代の経済社会。ひとたびデータの集積・分析や良質な製品・サービスの開発に成功した企業にはさらに多くのデータが集積し、加速度的に「独占化・寡占化が進む傾向にある」。公正取引委員会の杉本和行委員長は極端なデータ独占の弊害に対しては一定の歯止めが必要になっていると語る。
要は既存の独占禁止法は、従来であれば談合のような「同業他社が結託して落札価格を調整して不当に高めに落札したうえで、落札会社が主幹事として他社に利益他の利便を図るといった不正構造」には有効だったけど、今のプラットフォーマー相手では対応できない訳です。ザックリ言って理由は3つ。
- 無形のデータやデータの紐づけ、価値づけを扱っていて外部から判断する手法が未確立
- 直接的に情報提供元に対し金銭授受が存在しない
- 一体何が寡占化されているかすら把握出来ない
杉本氏は、極端なデータ独占の弊害に対しては一定の歯止めが必要になっている
と語っているが、そもそもその弊害が何かすら定義しかねているのが実態でしょう。
そもそも何を問題視しているの?
データ独占を巡る議論は、グーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大企業との戦いに明け暮れている欧州連合(EU)が先行している。欧州委員会は今年1月、データ経済の実現に向けた「戦略文書」を公表。データ分析が健康、環境、食糧安全保障などあらゆる分野で不可欠なことを強調し、特定企業がデータを囲い込むことに懸念を示した。経済協力開発機構(OECD)も昨年、同じ不安を盛り込んだ報告書をまとめた。
これでも尚明確であるとは言いづらいですが、キーワードとして以下の3点があります。
- 既存の利益構造「健康、環境、食糧安全保障などあらゆる分野」
- これらに必要なデータ分析
- 特定企業がデータを囲い込む
囲い込んだらどうだというのかというのがありませんが、独占的に分析結果、或いは分析結果による優位性が結果的に市場を支配する武器となり、不当に他社や他者、或いは国家に不利益を与える可能性を心配している感じでしょうか?もう少し噛み砕いて具体化すると以下の資料が参考になります。
穏当な対応を模索
和解する対応
要は企業側が理解を示して譲歩するのであれば、それ以上の追い込みはしないという話です。これを和解と見るか企業側の泣き寝入りと見るかは視点によって変わるところですが、当局視点で言えば和解なのでしょう。
個別案件の解決方法では企業との対話を通じて落としどころを探る傾向が強まっている。「クロだ」として一刀両断で違法認定したり制裁金を科したりするのではなく、和解の道を選ぶもの。米司法省のほか中韓など各国当局もこうした穏当な決着を目指す考えを採用している。例えば米アップルが、本の朗読を聞く「オーディオブック」業者との間で結んでいた独占納入契約についても今年1月、アップルと業者が自主的に契約を見直したことで、欧州委と独連邦カルテル庁はおとがめ無しとした。
当時の報道はこんな感じです。
カルテルや入札談合をあぶり出すために利用者としてデータ活用
データ自体には罪が無い訳ですから、立っているものは親でも使え、どんなに敵性であっても使えるものは使ってやれという逞しさや潔さには好感を覚えます。
一部の海外の競争当局にはデータを新たな武器として積極的に活用する動きもある。韓国やメキシコ、スウェーデンの競争当局は入札価格や落札率、業界ごとの製品価格の推移などのデータを集めて分析。カルテルや入札談合をあぶり出す手法を運用し始めた。OECDでも2013年から、こうした手法の有効性について議論が進められている。
終わりに
勿論、穏当策だけではなく敵対し制御をかけようという動きも収まっている訳ではありません。
実際今のところ誰もルールらしいルールを作り切れておらず、仮に作ったとしてもその妥当性を検証できる状況ではありません。未だ、そこに辿り着くより遥か手前で情報収集・実態把握をしながらあーでもないこーでもないを今まさに行っている段階と自分は受け取りました。
ネットユーザにしてみれば、仕組みが無ければそもそも存在すらしなかった繋がり情報がどう使われたところで構いはしないという方も少なからずいるでしょう。ただ、その一方である日唐突に不利益を被る不幸に面したとしても「最初に契約に目を通して合意したよね」で終わる不安やリスクは常に付きまといます。
夢物語かもしれませんが、全ての関係者にとってより良き結果、よりよき有益のみが得られる仕組み「明るい社会の窓」が構築され維持されることを小生は祈ります。