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本嫌いの方に超オススメ!今年の夏は「美しい日本の廃墟」で心の廃墟巡り

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こんにちは、DACです。

今日は、「美しい日本の廃墟」という写真集についての覚え書きと所感を書きます。書評などと言う立派なものではありません。概要をお伝えする力量や時間が今は無いので自分用です。

元ネタ

  • 書名:美しい日本の廃墟-いま見たい日本の廃墟たち
  • 写真・著者:ヨウスケ/マツモトケイイチロウ/腐肉狼
  • 発行:エムディエヌコーポレーション
  • 発売:インプレス

概要

日本の廃墟の写真集。掲載されているのは、数え間違いが無ければ74箇所の遺構(内一カ所のみ海外)。遺構とは遺跡と同様過去に使われ今は遺棄また休止となった建造物、施設の廃墟を指す。

基本的に一拠点ごとに見開き2ページの写真が配置されています。写真集なので写真が主役だけど、付記されている説明文が300文字くらいあって、写真に載りきらないその廃墟の情報が記載されている。

章立ては以下の通りです。

  • Chapter1:学校、病院その他公共施設の廃墟-かつて反映した街にあった日常の面影(14遺構)
  • Chapter2:ホテル、観光レジャー施設の廃墟-楽しい時間や癒しのひと時を提供していた施設の末路(13遺構)
  • Chapter3:炭鉱、鉱山の廃墟-日本のエネルギー供給を支えた歴史の産物(13遺構)
  • Feature1:軍艦島(1遺構)
  • Chapter4:集落・集合住宅の廃墟-人々が日々の生活を営んでいた温もりのあった場所(11遺構)
  • Chapter5:工場・発電所の廃墟-日本の産業を支え、生活を豊かにした施設の引退後の姿(11遺構)
  • Feature2:チェルノブイリ(1遺構)

雑感

限られた時間に廃墟の魅力を堪能することが出来る素敵な写真集と思った。出来れば、手元に何冊かおいて、浸りたいとき何度も眺め返したい。

特に「本を読むのはちょっと」と思ってしまう本が苦手の人に奨めたい。

興味があっても簡単には踏み込めない廃墟巡り

自分には廃墟巡りという趣味は無い。たまにテレビや雑誌等のメディアで取り上げられると、「わあ、面白いなあ」「綺麗だな」という一時的な感想を持ちながら、あくまで一時的なコンテンツ消費しかしていなかった。

その一方で心惹かれる物はあった。というのも、なんとなく壊れてしまった物、失われてしまった物には独特の美しさ、懐かしさがあって、どう表現した物か難しいけれど、浸り込める要素がある。その場所で一人で在りし日の姿を想像しつつ今の姿を対比し、その独特の退廃的で壊れてしまった物の美しさを感じ入りたい。

ただ、そうは言っても思いつきで出来る趣味では無いのも想像に容易い。

廃墟というのは既に使われなくなってしまった場所。当然建物としての強度は脆弱化していて危険だし、危険生物(動物、虫もそうだし、不法侵入者や不法居住者も含める)による危害リスクもある。何より現場に移動する経費や時間と言った負荷は決して馬鹿にならないだろう。

やるとなれば、相応の覚悟という物が必要で、小生にはそれを踏み込むだけの備えというか素養に欠けているのだ。

幸せな気持ちに浸れる贅沢な写真集

この写真集は、本当に良い本だと思った。家にいながら心を廃墟に飛ばすことが出来る。

勿論、実際に行けば受け取れる情報量が段違いに多いことは間違いない。空気中に飛び交う匂いやその他の粒子、温度や湿度感、空間の広さや狭さや高さが与えてくる空間把握感、人が入り込んで動くことで反響する音、風やその他の環境に応ずる反応、生い茂る植物や苔の存在感、挙げればきりが無いと思う。

それでも、写真と説明文が読む者に語り伝えかけてくるるものは決して少なくは無い。こんな贅沢な写真集に出会うことが出来てとても幸せな気持ちになった。

文字の説明は淡々とした写実的で客観的な表現に特化したものとなっている。しかし、写真と併せて何度も読むと、あたかもその場にいるのではないかと感じさせるものがある。

アナログな本に最適化された統一的な形式

文章はとても短く簡潔だ。写真を主とするためというのもあるけれど、たった300文字強にギュッと情報を圧縮してその遺構の魅力を抜け漏れなく伝えようとしているのが分かる。

その場所がいつどういう風に栄えていて、それがどういう理由や経緯があって使用されなくなったか?今その場所はどうなっているのか?どういった風に受け止められているのか?これだけのことを語り伝えるのは決して簡単では無い。

でも、その難しいことをサラリとしてくれている。とても有り難いことだ。廃墟巡りコンテンツはWebで散見されるし、物によってはこの写真集よりもとても深く広い情報が公開されている。しかし、1遺構2ページという限定され、且つ統一的なフォーマットで必要十分と言える形で纏めたものは決して多くは無いだろう。時間を捻出しにくい人がそれらを検索して読み込むのはとても厳しい。

まずは一覧してどういう場所かを感じ取れる。そして何度も読み返し、眺め返すことが出来るという面では、アナログな紙の写真集はWebコンテンツと比較にならぬぐらい使い勝手が良い。

覚え書き

以下は自分が気になった部分を覚え書きで引用してそれぞれに所感をつけます。読んでいない人には何が何だかでしょうが、別に伝達は意図していません。

自分が特に「これは」と感じた物の抜き書きと感想なのでこの写真集の全体を示す物ではありません。

太陽小学校(北海道)

太陽産業株式会社が開いた築別炭砿で採炭され人口が増えるとともに1940年「公立太陽尋常高等小学校」として現在の太陽小学校が開校された。1968年の炭砿閉山と共に人口が流出し1971年に閉校、以降宿泊施設に転用されるも利用減により閉鎖した。

円形ドーム型の体育館の写真が見開きでドーーーン!!見事です。太陽をイメージしたのかは分かりませんが、鉄骨が同心円状に組み込まれた屋根は現在であってもとても見栄えがするものです。こんな立派な物を作るぐらいです。その頃の石炭産業の旺盛ぶりが思い浮かべられます。実際、章立てとして炭砿自体で一つ設けられているくらいです。

今でこそ、先進国を自認する国が後進国に対し温暖化の原因になるから使うななどと言っていますが、どの口が言うかというほど石炭に頼っていた時期があったのです。今は原子力発電主流でそれをエコだと言って憚らない訳ですが、それとて未来においては遺物となるときがきっと来ます。

遺構はそういった時代や情勢を形として伝える物です。軍艦島のように認定を受けた物はその中のごく一部に過ぎません。これはあくまで民間の作った物ですが、箱物として国が作った物も同じです。ちょうど2020年の東京オリンピックに向けて色々な競技場を作ったりしていますが、終わって大して経たぬうちに遺構だらけになり、取り壊すにも馬鹿にならないお金がかかることは既に予想の範疇と言われています。

確かに先のことは確実には見通せません。その時代には石炭はもっと長く使われる物と信じられていたのでしょうけれど、どうなるかを常に考えながら今を生きる姿勢が大事なのじゃ無いかと思わされます。

奈良ドリームランド(奈良)


1961年開園の奈良ドリームランドは、その開園を条件に奈良市より払下げられた土地に建てられた遊園地で、日本ドリーム観光代表の松尾國三氏が、アメリカ・アナハイムにあるディズニーランドに感激し。ウォルト・ディズニーに直接面会して日本に誘致しようとしたことが建設の切っ掛けでした。松尾氏の熱意に打たれたディズニーは、ディズニーランドのノウハウを無償で提供し、建設時に技術者を派遣したといわれています。
本家が東京ディズニーランドを作り、USJが関西に作られたことで客足が減り2006年に閉園したそうです。写真には様々なジェトコースターのレールが優美な形を写し出されています。

人が来ないものは致し方ありません。しかし、それでも勿体ないなと思いました。一つ運営の仕方が違えば関西ディスニーランドになったのかもしれません。たらればを言うことに意味が無いことは百も承知ですが、こういった経緯を知ると惜しむ気持ちにもなります。勿論、そのときその場所にいたとして自分がこの遊園地にお金を落としたかどうかは怪しいのですけれどね。

川南造船所跡(佐賀県)既に更地化済み


戦時中は特攻兵器「回天」を製造していたといわれ、戦争遺跡としても歴史勝ちのある造船所跡です。元々は輸入材料を加工する硝子工場だった場所を1940年に川南工業が取得し軍需工場に改築しました。1955年に閉鎖された後は半世紀にも渡り放置され、緑が奔放に生い茂る神秘的な大空間はラピュタに例えられることもあり、多くの廃墟マニアを魅了しました。
自殺遺体が発見されたり、付近住民の撤去要請を受け2012年に解体撤去されたとのことで、今はこの場所には何も無いようです。

勝手な発言になりますが、勿体ないと思いました。今は写真にしかないその光景はまさにラピュタのそれです。無骨な機械や建造物の人工物に植物の緑が浸食し覆い被さり融合しているのです。もし、今の我々人類が滅亡したならきっと世界はこういう感じに自然に帰りつつ、人の痕跡が尚残る世界になるのだろうと思いました。

北朝鮮とアメリカの緊迫した状況を眺めていると、キューバ危機以来の事態に今まさに面しているように感じます。自分たちが今生きている場所、勉強している場所、仕事をしている場所、遊んでいる場所、それらを下支えしているインフラ、それらは決して永久にあるものではありません。たまたま今存在し、たまたま我々が今そこで生きているだけのことです。この後無事に平成の次の年号を迎え、更に先、その先になっていくにせよ、ある日一瞬で人類がいなくなるにせよ、今あるこれらの残滓が未来で語る物についてぼんやり考えました。

終わりに

悲観が過ぎると感じるかも知れませんが、人は永久には生きられません。人という種自体もきっと永久には存在しません。だから、今を一生懸命生きなければいけないし、過去にあったことの残滓を少しなりとも知っておくのは損では無いと思いました。

戦争の記憶、炭砿が主要産業だったときの光景、いずれも自分は知りません。知っていると口にする資格もありません。でも、今残っている物から思い致すことは、過去との対話であり、今を作ることであり、未来に何かを遺すことに繋がっていくのでしょう。

あなたも、ある程度時間が自由になる隙間にこういった写真集を眺めてみてはいかがでしょうか?

書籍

ネタ元書籍

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