痴漢の真犯人が捕まるような方法が早く出てくると良いのにね
こんにちは、DACです。
今回は、電車の痴漢関連についてのお話しです。
元ネタ
なんだかすごーい反響のある記事です。痴漢冤罪では比較的ありがちなシナリオな気もしますが、外国人の事例だからでしょうか?色々と感想が集まっています。
概要
- 欧州出身のビジネスマンが通勤途中山手線で痴漢の疑いで私人逮捕をされた
- 子どもがいて、犯罪歴もなく、同じ電車で4年間問題を起こさず通勤してきた自分が痴漢と見做されることは無いと判断し、促されるまま駅事務所へ向かった
- そのまま告発されて警察に引き渡され手錠で連行され留置場に入ることになった
- 弁護士からは無罪であろうと罪を認める自白を奨められた。警察が最大23日拘束可能で有罪判断時リスクが高く、前科が付いても金で処理する方が良いとの判断
- リスク勘案の結果、前科やむなしとし無念のまま日本を去ることになった
所感
被害を受けた女性が可哀想、実際に痴漢をした犯人が卑劣というのは当然過ぎる事なので、それは措く。ビジネスマンが無罪であるという前提での感想になるが、酷い話だと思う。
そうとはいえ、本人の認識は確かに甘かった。痴漢の疑いをもたれた場合、前科の有無や普段の生活の有り様は全くプラスには考慮はされない。素行が悪い場合のみマイナスに触れることはあるだろうが、いかな善人で著名だろうと疑いをかけられた時点でその名誉は再起不能な形で汚されてしまう。
駅事務所に被害者に連れ添われてついて行った時点で私人逮捕と見做される。私人逮捕とは、刑事訴訟法213条で規定されるもので司法警察職員に限らず一般人でも誰でも逮捕状がなくても行うことができるとするものだ。この成立条件は、対象者が現行犯相当であり、且つ逃亡の可能性が高く身柄を押さえる必要があると思われる場合である。
裏を返せば、くっついていった時点で現行犯で逃げそうなところを取り押さえられ観念したものと扱われる可能性が高くなってしまう。そのため、誘導されようと恫喝されようと駅事務所についていってはいけないという冤罪対策としてよく指摘されるところだ。
私人逮捕をした後は、刑法214条で指定されたとおり司法警察職員へ身柄を受け渡されるともう後の祭りだ。
痴漢は「推定無罪」ではなく「推定有罪」
日本国憲法第31条では「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」という推定無罪が示されている。日本が批准している国際人権規約B規約14条2項でも「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。」とされている。
しかし、事実上痴漢には推定無罪は適用されない。
本来、刑事裁判における犯罪の証明には、捜査機関が「被告人が犯罪をした証拠」を提出する必要がある。しかし、痴漢の場合は物的証拠がほとんど残らないという犯罪の性質上、被害を受けた者の「この人が痴漢をした」との証言(犯人識別供述)と被疑者の自白程度しか証拠がないことが多く、その証言ないし自白が信用されるものと認定されれば、具体的な物証がなくとも実際に犯罪をなしたと見なされる傾向にある。日本は他の近代法治国家と同様に推定無罪の原則を採っているが、痴漢を含む性犯罪に関しては、容疑者がいわゆる「悪魔の証明」をしない限りは被害者の訴えのみで有罪が確定するケースが大半である。
訴えられたが最後勝てる見込みが無い
上記の例で言えば、「この人が痴漢をしました!」と被害者が告発した時点でまず勝負あったなのだ。更にその訴えを強化するという意味で指摘逮捕に唯々諾々と協力したのは悪手過ぎる。捜査機関としてはダメ押しとしての被疑者の自白を入手すれば、いっちょ上がりなのだ。
やっていないことを証明するのは基本的に不可能だし、目撃情報も経時的に失われてしまうから時間を稼がれればますますどうにもならなくなってしまう。
冤罪を受けた側は被害者だ
冤罪であるという前提で語るなら、冤罪を受けた側は明らかな被害者だ。全く関係の無い話に巻き込まれ、罪を着せられ、社会復帰が不可能な状態に貶められ前科をつけられてしまう。この前提では、被害女性は被害者でありながら最悪の加害者でもある。女性の認識の中では冤罪被害者こそ憎むべき痴漢に写っているだろうけれど、その認識の過誤こそが罪だろう。もし、間違えていたとしても責任を取ることも無い。
無関係な立場では被害女性には遠巻きに同情こそすれ、身に覚えの無い罪を負って不幸になってあげる義理も意味も無い。世の中に様々な犯罪や不幸があるけれど、わざわざ火中の栗を拾いに行くのはよほどの物好きか職業的に事件を扱う人だけだ。言葉を選ばなければ、知ったこっちゃ無いし、そんな不幸に近づけば不幸を移されかねず縁を持ちたくないというのが人情だろう。
冷たいと言われても困る。そう言うなら、あなたは世の中のありとあらゆる不幸に鼻をつっこんで解決しようとしたのか?常に何でもよの不幸に寄り添おうとしているのか?自分が出来てもいない神様や聖人、偉人的な偉業を赤の他人に無造作に求めてはいけない。
そもそも立証できない物を立証しようとするから無理が出る
現行犯ではっきりやったことが証明できればそれに越したことは無い。
しかし、窃盗や暴行のように行為者が現行犯であれば明確であるとの違い、電車の痴漢は行為そのものが秘匿的になっている。そういう意図を持って問題行為をしているかどうかを押さえるということが現行犯であっても難しい。たまたま近くにいただけの人を間違えて捕まえたとしても、それは被害者自身も判別が出来ない。あるのは感覚的な確信のようなものだけで必ずしも信頼に足らない。
要は犯罪として立証しようがないものを立証するために被害者の訴えだけを拡大解釈しているのが実態と言える。
痴漢の真犯人が捕まるような方法が早く出てくると良いのにね
当事者は被害女性と憎むべき真犯人だけだ。しかし、被害女性の立証が必ずしも信用できず、犯罪者は当然自首などするわけがない。
そうなると、客観的な犯罪状況の記録が欲しい。第三者の目撃者情報というのを考えたが、これも被害女性の立証と同じく安定性や信頼性を担保出来ない。配置が検討されている犯罪記録カメラの設置がもっと進んで欲しい。勿論満員電車で密着し合っている状況では撮影範囲は限定されてしまうけれど、設置自体がそれなりに犯罪抑止に役に立つのでは無いだろうか?
また、サーモグラフのように温度感知や超音波のようなもので目視不能な部分の撮像も併せて記録できないだろうか?技術的にどうというのは分りかねるけれど、目視で駄目なら他の手段との組み合わせも検討されると良い。
とにかく今の状況は犯罪を構成するにはあまりに立証手段がプア過ぎる。そんな状態で無条件に巻き込まれるのは困るし、訴える側だって確信を持てないまま誰かを冤罪で酷い目に遭わせるのは不本意だろう。
今回は冤罪被害者の男性の側に立って話を進めたが、そもそも悪いのは痴漢であり、冤罪を許容する法の運用のあり方だ。そこを明確に追いかけない限りは、男が悪い、女が悪いとミスリードし、全く意味の無い分断が生まれ憎悪関係を生み出すだけだ。途轍もなく不毛で意味が無い。
妄想に収まらず、痴漢の真犯人が捕まるような本質的な方法が早く出てくると良いのにと心底思う。